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カナダ・アメリカの生活、ランニング、映画、SF、政治、オタク度何でもあり。続けられたらよし。
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2週間ぐらい前に小津安二郎の『麦秋』を見た。1951年の作品である。戦後まもないが、かなり発展した東京の様子が見れて、何だか少し不思議な気がする。ストーリーとしては、一人のOL(当時はそんな言葉ではなかったと思うが・・・)とその中流家族の様子が描かれている。結婚適齢期と思われるその女性を家族は婉曲に結婚を援助するのである。が、最終的には彼女自身が家族に相談せずに勝手に結婚するのを決めてしまうというようなものだ。

ストーリーには、劇的なものがない。だけど、この日常性を描いたのが小津と言われている。前にも確か「東京物語」「早春」「秋刀魚の味」とか見たことがある気がする。こういった作品もどちらかと言えば、家族の日常生活を描いている。その時はあまり何も思わなかったが、意外と『麦秋』では、当時の女性の声を反映しているのではと思った。ある意味、独身のワーキングウーマンが、自分の意志で決めて結婚して行くというのは当時ではまだまだ難しかったに違いない。またこの女性と小姑(義理の姉)の絆が深いというのも面白い。兄妹直接話すよりも、女同士で話す方がよいような設定。普通なら、とっても仲が悪いように描かれている。(だけど、この家族あんまりけんかしないんだよね。ただ甘やかされた子供はめちゃくちゃ叱られる場面がある。)それに、女友達の関係。既婚者、未婚者というふうに分かれていってしまうようなところも描いている。さらに、家族の形態の微妙な変遷を捉えてもいる。特に、父子関係がただ単なる権力のある関係から変わってきつつ面も描き、最終的には核家族へと家族形態が変化しているのもいち早く取り上げている気もする。そして、やはり戦後だけにこんな平和な家族を描けるのも意味があったに違いない。

とっても日常的な所に、意外とリベラルなメッセージが含まれているのかもしれないな。というのが、私の率直な感想。

そう、小津作品をまた見てみようかなとも思ったのも、例の少女マンガのトークに行った時に買った色々なマンガ論評が書いてある中に、小津と「エヴァンゲリオン」の監督の庵野秀明監督の作品の「Love and Pop」(1998 邦題よく分かんない)が両方ともローアングルで撮られていることを話していた。この地面からギリギリのところで撮られるローアングルというのは、日本のイメージ独特の物らしい。小津が確立したものらしいが、この日本のお茶の間、ホームドラマと言えば、このアングルで撮られていることが多いせいかあまり気にしたことがなかった。だけど、Wにとっては、馴れるまでに時間がかかったと言っていた。なるほどね〜。今まで思ったことがなかったが、言われてみると!それも確認したくて小津作品を見てみたかった。そうすると、そのアニメがローアングルで撮られていることもとっても気になり始めた。

それは、さておき、この作品に出ていた俳優たち。日常を演技するってのも意外と微妙で難しいと思う。笠智衆は寅さんシリーズの「男はつらいよ」でおなじみだが(今の世代の人は知らないか・・・)彼も小津の映画にはよく出ている。そして、左が原節子。右が淡島千景。いやあ、何だかこの時代の美女には味がある気がするね(かなりオヤジ入ってるな〜)。原節子はきっとこの役柄よりももっと他の作品の方が演技の味があるのかもしれないが、やはり彼女の美しさには参った。何て言ったらいいのか分からないけど、今の女優にはいないタイプのような気がする。もっと彼女の作品が見てみたいね。淡島千景は年取ってからも時々テレビに出ていたよね。いやあ、かわいらしい。だけど、何だろう、当時の女性としては、芯のある感じ、ちょっと突っ張りがある感じで面白い。もと宝塚出身なだけあって、いろんな演技ができそうだね。余談ですが、あの手塚治虫の「リボンの騎士」のモデルは彼女だと言われていることを初めて知った。そう言われれば、何となく雰囲気があると思う。

この二人が秋田弁でしゃべるシーンがあるんだけど、これが面白い。実際に秋田の人に言わせたら、どうなのか分からないけど、すっごく上手に聞こえる。この為にかなり練習したのかなと思わせる。

ここまで書いて、趣旨は何だったんだろうと自分でも思うが、また小津作品を見るのもいいかなと思い始めた。この時代の作品、溝口、もちろん黒澤もやっぱりよい作品が多い。

ちょっと前だけど、生誕100年のウェブページ
http://www.ozu100.jp/
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ほほう~!
趣味が広範囲に広がってますね~!
私自身は、昔の映画にはあまり興味が無いので、良く分かりませんが・・・
昭和30年代の映画などは、子供たちが見て理解できない部分も出てくるんでしょうね~!
世の中はどんどん進化しちゃって、一体何処まで行くんでしょうね~!
mika 2007/10/14(Sun)12:22:29 編集
Re:ほほう~!
いやあ、昔から結構古い映画好きですね〜。時々、バンクーバーでは古い映画のスペシャルとかあるし、あとビデオ・DVDなんかが意外と手に入りやすくていいですね。古い映画は技術がまだ発展していないから、いろんな面で工夫しなきゃいけないし、俳優の演技がやはりものを言うと思うんですよね。だから、面白いです。
ISIS  【2007/10/15 03:57】
RE:
おもしろいですね。うちの親と話があいそう!
私もそういうの好きだけれど、あまりみないなあ。まだ縁がないというか。
ローアングルの話だけれど、最近魚眼レンズを使ったのがわりと人気でしたよね。あれがメインストリームのアニメに使われているのを見て、アニメも映画に近づいている気がしました。もう、ただの2次元の世界じゃなくなってきてるっていうか。
日本の昔の本や映画をみると、社会がどんどん変わっていく事を実感しますよね。やっぱり経済成長などにつれて、かわりゆくのが文化なんですねえ。でもそういうと、やっぱりある程度、文化(価値観)などは経済観念に影響されるものなのかなって思いますね。
はr 2007/10/15(Mon)13:05:07 編集
Re:RE:
>うちの親と話があいそう!
はrさんの親御さんもお好きなんですか?親御さんの年代でも結構古い映画ですよね。はrさんもぜひぜひ見てみて下さい。

>ローアングルの話だけれど、最近魚眼レンズを使ったのがわりと人気でしたよね。あれがメインストリームのアニメに使われているのを見て、アニメも映画に近づいている気がしました。もう、ただの2次元の世界じゃなくなってきてるっていうか。
なるほどね〜。テクニカルなことは全然知りませんが、魚眼レンズっていうんですねえ〜。アニメもやはり進化ですよね。ほんと、3次元的世界ですよね。

また逆に、日本の絵画、そしてマンガも含めてすっごく平面的な絵も多いということで、鑑賞者の視点を拡散するということで、ポストモダン的と言われている論評読んだこともあって、面白いな〜と思いました。村上隆がスーパーフラット論とかいって、写真やオブジェを展示しているのももう5年くらい前かな〜、バンクーバーの美術館に見に行きました。

>やっぱりある程度、文化(価値観)などは経済観念に影響されるものなのかなって思いますね。
そうでしょうね。やはり資本主義によって今の世の中は動いていますもんね。その上に、文化が成り立っている。やはり変わらずを得なかった。またこれからも変わり続けるんでしょうね。
ISIS  【2007/10/15 15:48】
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20代前半にカナダに移住、はや11年目を迎え、まだまだ風来坊です。大学院留学、英語講師の経験を経て、また30半ばにして学生生活へと戻るべく準備を進めています。5月に初マラソン完走!更に走り続ける。。。
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